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那覇家庭裁判所コザ支部 昭和51年(家)552号 審判

国籍 アメリカ合衆国ハワイ州

住所 沖縄県宜野湾市○○

申立人 ヨウコヤマキ

国籍 申立人に同じ

住所 沖縄県沖縄市××

相手方 ヒロタカヤマキ

主文

相手方は申立人に対し婚姻費用として金五七万四、九五五円及び昭和五三年三月から毎月末日限り金九万四、〇〇〇円を支払え。

理由

1  申立人は申立の趣旨として「相手方は申立人に対し、昭和五〇年一月分より毎月一五万円の扶養料を支払え」との審判を求め、その実情として、

申立人と相手方はアメリカ合衆国ハワイ州に国籍を有するものであるが、昭和二二年八月一九日婚姻、その間に長女ヒロ子(昭和二三年生)、長男タカシ(昭和二五年生)、二女シノ子(昭和二六年生)を各各出生、同人等は現在各々独立した生活を営んでいるもので、相手方は昭和四四年一〇月頃から件外山本康子と同居しているので相手方に対して昭和五〇年一月から婚姻費用分担を求めるというにある。

本件は扶養料請求事件として申立ているが、申立人と相手方とは婚姻中であるので、婚姻費用分担事件として審判をする。

2  本件における各疎明資料、調査官の調査報告、各審問結果を綜合すれば、

(1)  申立実情は認めることができ、別居に至つたのは次のとおりである。

相手方は昭和二六年二月頃米国空軍に軍属として就職、食肉販売係に任ぜられ、昭和三七年一月頃、沖縄に転属、単身で赴任、申立人と子供達は四ヶ月後から引越して同居したところ、申立人等が沖縄にくるまでに他の女性と関係があり、相手方はその女性関係を解消して、申立人等と同居したが、同居後双方とも、女性関係のことについて、わだかまりがあつて争があつたものである。ところが、申立人は比較的身体が弱く、昭和四四年九月頃子宮癌と診断されハワイ州にて治療、同年一二月一九日帰つたところ、相手方は、その間の同年一〇月頃から件外山本康子と同棲して、申立人と別居し、同人との間に昭和四六年七月一七日に弘一、昭和五一年五月二五日に宏の二児を出生しているもので、申立人と相手方の別居の原因は相手方の件外山本康子との関係によるものである。

(2)  申立人は別居当時は申立人と長女ヒロ子、長男タカシの三人で生活していたが長女ヒロ子は昭和四七年三月婚姻、一児を出生したが昭和五〇年一一月頃離婚して子供を連れて申立人と同居、その後昭和五一年一二月就職のため渡米、長男タカシはキャンプ○○のP・Xに勤務して別居しているので申立人は現在一人で暮しており、別居後は相手方からの支払つた別紙目録記載のとおりの金員その他で生活しているものである。

相手方は件外山本康子、前記(1)の認知した二児と、ともに標記住所に居住しているものである。

(3)  双方の資産は、申立人は昭和四九年頃米国ハワイ州に土地二エーカーを相手方から贈与を受けたが、その土地からの収入はなく、申立人は相手方に依存しているものであり、相手方は資産はないが、現在軍属として後記のとおりの収入によつて(2)記載の四名で生活しているものである。

(4)  相手方は別居後、申立人との離婚を望んでいるものであるが、以前長男タカシに会つた際に、母(申立人)は離婚に応じないことを話していた旨を聞き及び、直接申立人には離婚の話しはしてないが、離婚訴訟のため、○○○○弁護士、××××弁護士に離婚訴訟の相談をしたところ、両弁護士からハワイ州の離婚法では有責者からの離婚請求はできない旨教えられたものであるが、申立人とは婚姻を継続する意思はないものである。一方、申立人は病弱のため医療治療を必要としており、離婚すれば医療保険その他軍属の家族としての特典がなくなり離婚する意思はないが相手方と同居は望んでいないもので申立人と相手方との間は夫婦としては破綻しているものである。

(5)  申立人は(2)記載の通り一人暮しであるが、以前結核を患つたこともあり、身体が病弱であり更に昭和四四年九月頃から子宮癌の治療を要する事情にあり、その治療費は相手方の医療保険で治療をしているため特別に治療費は支出してないが、食事療法のため普通の人より経費を必要としているものである。

相手方は(2)記載の通り件外山本康子と弘一(昭和四六年七月一七日生)、宏(昭和五一年五月二五日生)等四名で生活しており、前記山本は前記二児の母親で二児が小さいため養育するためには必要なものである。

(6)  以上により本件における別居原因は相手方にあり、相手方は申立人に対し双方が共同生活を営んでいる場合に準じてその婚姻費用を分担する義務があるものである。

(7)  そこで相手方の負担すべき婚姻費用につき、考えるに申立人は収入はなく相手方は軍属として食品販売の仕事につき、提出の疎明資料によれば、基本給一、五一八・四〇ドル、手当三五七・九二ドル、計一、八七六・三二ドルで控除経費は税金二五八・八二ドル、保険控除三二三・九四ドル、計五八二・七六ドルで差引手取額は一、二九三・五六ドルである、のでその収入を労働科学研究所生活方式により、申立人、相手方とに各々独立世帯の加算をすると、その消費単位は、申立人一〇〇、相手方一三五、弘一五五、宏四〇であるから、相手方の収入のうち申立人の生活費に当てるべき金額は、

1293.56ドル×(100/330) = 391.98ドル(以下切捨)

となるので、書記官作成の日本銀行那覇支店からの電話聴取書によると米国通貨との昭和五三年二月分の、円の対ドル、東京外国為替市場インターバンク直物中心相場日中単純平均は一ドル対二四〇・二八円であるので、これにより換算すれば、

391.98ドル×240.28円 = 94,184.9544(円)となる。

そこで申立人及び相手方の一切の事情を考慮して昭和五〇年一月以降別居期間中の相手方が申立人の生活費として負担すべき婚姻費用分担金を月額九万四、〇〇〇円と定める。

その結果相手方が申立人に対し昭和五〇年一月から昭和五三年二月まで支払うべき分担金は

94,000円×38月 = 3,572,000円であるから同金員から相手方が申立人に対し昭和五〇年一月から昭和五三年二月まで支払した別紙目録記載の金員二九九万七、〇四五円差引いた金五七万四、九五五円と、昭和五三年三月分から月額九万四、〇〇〇円を相手方が給料生活者であることを考慮して各月末までに支払のが相当であると認める。

3  申立人及び相手方ともアメリカ合衆国ハワイ州に国籍を有する者であり、法例第一四条により婚姻の効力は夫の本国法に依るのでハワイ州親族法第三三章三二五-七によれば「夫の責任として婚姻期間中妻を扶養する義務を有する」と規定され、住所地による管轄も認められているものである。

4  以上により、申立人の申立は昭和五〇年一月から昭和五三年二月迄の分金五七万四、九五五円と昭和五三年三月から九万四、〇〇〇円の限度で理由があるものである。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 下地裕)

別紙目録〈省略〉

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